医学部医学科小論文について～医学部小論文キーワード「終末期医療」をどう書くか

進行性の病気や老衰、障害によって治癒の見込みのない、医学的に言えば、「手の施しようのない状態」になったときに、医師が施すのが「終末期医療」。

この終末期医療についてどう考えるか、ということもよく問われるテーマです。

では、医学部医学科受験においての小論文で、終末期医療についてどう論じるか考えてみましょう。

出題意図を理解し、どのように論じればいいかを考える

まず、終末期医療について、基本事項を理解しておきましょう。

終末期医療とは、回復の見込みがないとされる患者が残された時間を有意義に過ごすために行われる医療措置のこと。

主として、患者の身体的・精神的苦痛を緩和するための医療行為が行われます。ＱＯＬ（クオリティ・オブ・ライフ）の向上を目的とし、医師には、患者やその家族に寄り添うことが求められるでしょう。

この終末期医療について、受験生に問うとしたら、大きく二通りの問いが考えられます。

まず一つ目は、「あなたが考える適切な終末期医療とは」。そして二つ目は、「あなたが医師として終末期医療に関わるとしたら、どのようなことを大切にするか」。

どちらも医師としての考え方・姿勢が問われていますが、論じ方が少し違ってきます。二つのパターンを書き分けられるようにしておきましょう。

論旨の進め方

では、先に挙げた二つの問いに対して、どのように論じればよいか具体的に考えてみたいと思います。

ここでは、800字、四段落構成の書き方を説明していきますが、600字で書くように求められた場合には、三段落をカットするようにしてください。また、求められる字数が800字を上回った時には、各段落に字数を少しずつ振り分けましょう。

四段落構成の場合には、序論、本論1、本論2、結論、という流れでまとめていきます。

まずは「あなたが考える適切な終末期医療とは」。

序論では、終末期医療というキーワードを自分なりに解説します。この解説については、ごく基本的な事柄、つまり終末期医療の大きな定義が伝わるように書きましょう。そして、「では、適切な終末期医療とはどのようなものだろうか」と問題提起をします。

次に本論。ここでは、あなた自身が考える適切な終末期医療のあり方を具体的に述べていきましょう。

たとえば、「患者本人、そして、患者の家族の『こうありたい』という意志を尊重すること」や、「できるだけ今までと変わらない生活を維持するために、苦痛を最大限に取り除くこと」などが挙げられます。

そして、それぞれに対して、なぜそう考えたのか、根拠を示しておきましょう。

結論部分では、本論で述べてきたことを端的に述べ、医師として終末期医療に携わるための心構えを書いて結んでいきます。

そして、「あなたが医師として終末期医療に関わるとしたら、どのようなことを大切にするか」。

序論では、やはり終末期医療の定義について簡単に述べ、「医師として終末期医療に関わるために大切にしたいことは二つある」とします。

次に、本論。

ここでは、「医師としての心構え」と「医療技術や環境の整備」という二つの観点から考えてみましょう。たとえば、心構えの部分では、「患者本人、そして、患者の家族に寄り添い、丁寧にコミュニケーションをとること」。

また、医療技術や環境面においては、「患者の苦痛を緩和するための医療技術の向上」や「他の医師、そして看護師としっかり連携出来る環境を整えること」などが挙げられるでしょう。

結論は、再度、終末期医療に対しての医師の姿勢について端的に書いて結びとします。

書く際に留意すること

終末期医療については、決まった正解はありません。それぞれの患者によってケースバイケースなので、患者や患者の家族としっかりとした意思疎通を心がける、ということが一番大切なことです。その前提さえ、しっかり守れば、そう難しいテーマではありません。

先に挙げた二つの問いのパターンに対して、書いていく内容は似ていますが、問われ方によって論じ方を変えていくことがポイントです。